近所に図書館ができた
小学五年生のときに僕は海辺の町に引っ越した。
町には町立の図書館があった。蔵書数は今思えば大したことはなかったのだが、こんなに本をたくさん置いている場所は見たことがない、すごいと思った。
僕は毎日のように図書館に通い本を読むことの楽しさを学んだ。
特に熱心に読んでいたのは、トーベ・ヤンソンの「たのしいムーミン一家」だった。
その頃から、この世界ではない別の世界の物語が好きになったのだと思う。
あの頃から五十年近く経ってしまった。
三十歳頃までは好きな本を何とかぽつりぽつりと読んではいた。
何時しか老後に読むと自分に言い聞かせて買うだけの本が大半になっていた。
最近は自分の人生も晩期に入ったなと思うようになった。
そんな時、近所に図書館ができた。
そして僕の新しい冒険が始まった。